表題の通りコマの重心周りの自転の運動方程式を解析力学で求める.ニュートン力学でこれを求めるのは厳しいと思う.
前提
多体系の運動方程式の計算はややこしいので省略.一般に剛体の運動方程式は重心の運動と重心周りの回転運動に完全に分離できる.本節ではこの重心周りの回転運動(つまり自転運動)のみを扱う.
この自転運動の角速度ベクトルを $\boldsymbol{\omega}$ ,慣性テンソルを $I$ とすると,自転運動の角運動量は
$$ \boldsymbol{M} = I \boldsymbol{\omega} $$
運動エネルギーは
$$ T = \dfrac{1}{2} \boldsymbol{\omega}^{\text{T}} I \boldsymbol{\omega} $$
と表される.
慣性主軸
慣性テンソル $I$ は対称行列であるので,固有ベクトルが直交するように対角化することができる.
$$ P^{-1}IP = \begin{pmatrix} A & 0 & 0 \\ 0 & B & 0 \\ 0 & 0 & C \end{pmatrix} $$
よってこの固有ベクトルがなす3方向に,重心周りに座標系 $xyz$ を固定し,この座標系のワールド座標からの回転角度を追跡するという方法を取る.解析力学的には,用いる座標系が回転していようとも問題ない.この座標系 $xyz$ での角速度成分を $(\omega_x, \omega_y, \omega_z)$ とすると角運動量は
$$ \boldsymbol{M} = I(\omega_x, \omega_y, \omega_z)^{\text{T}} $$
運動エネルギーは
$$ T = \dfrac{1}{2}(A \omega_x^2 + B\omega_y^2 + C\omega_z^2) $$
となる.
オイラー角
座標系 $xyz$ のワールド座標からの回転を指定する方法としてオイラー角 がある.これはワールド座標 $XYZ$ に対して
- $Z$ 軸を中心に $XY$ を $\phi$ だけ回転させて $\xi Y^{\prime}$ に移す
- 次に $\xi$ 軸を中心に $ZY^{\prime}$ を $\theta$ だけ回転させて $ZY^{\prime}$ を $z\eta$ に移す
- 最後に $z$ 軸を中心に $\xi \eta$ を $\psi$ だけ回転させて $xy$ に移す
することで $xyz$ 系を得る座標のとり方.
よって角速度ベクトルは
$$ \boldsymbol{\omega} = \dot{\phi} \boldsymbol{e}_{Z} + \dot{\psi} \boldsymbol{e}_{z} + \dot{\theta} \boldsymbol{e}_{\xi} $$
となる.これを $xyz$ の基底ベクトル $\boldsymbol{e}_x, \boldsymbol{e}_y, \boldsymbol{e}_z$ で表わすと,
$\boldsymbol{e}_Z$ は
$$\begin{align*} \boldsymbol{e}_{Z} &= \boldsymbol{e}_{z} \cos \theta + \boldsymbol{e}_{\eta} \sin \theta \\ &= \boldsymbol{e}_{z} \cos \theta + (\boldsymbol{e}_{x} \sin \psi + \boldsymbol{e}_{y} \cos \psi) \sin \theta \end{align*}$$
$\boldsymbol{e}_{\xi}$ は
$$ \boldsymbol{e}_{\xi} = \boldsymbol{e}_{x} \cos \psi - \boldsymbol{e}_{y} \sin \psi $$
となる.これを $\boldsymbol{\omega}$ に代入して
$$\begin{align*} & \omega_x = \dot{\phi} \sin \theta \sin \psi + \dot{\theta} \cos \psi \\ & \omega_y = \dot{\phi} \sin \theta \cos \psi - \dot{\theta} \sin \psi \\ & \omega_z = \dot{\phi} \cos \theta + \dot{\psi} \end{align*}$$
を得る.
ラグランジアン
よってポテンシャルを $U(\phi, \theta, \psi)$ とすると,系のラグランジアンは
$$\begin{align*} L &= \dfrac{A}{2}(\dot{\phi} \sin \theta \sin \psi + \dot{\theta} \cos \psi)^2 \\ &+ \dfrac{B}{2}(\dot{\phi} \sin \theta \cos \psi - \dot{\theta} \sin \psi)^2 \\ &+ \dfrac{C}{2}(\dot{\phi} \cos \theta + \dot{\psi})^2 - U(\phi, \theta, \psi) \end{align*}$$
となる.ラグランジアンを求めた座標系 $xyz$ は回転しているが,それには関係なくその回転角度について方程式を作ることができるのがオイラーラグランジュ方程式の利点である.