山本『解析力学』第二章の読書メモ.オイラーラグランジュ方程式を微分形式で表す.
オイラーラグランジュ方程式の共変性
以前の以下の記事において,オイラーラグランジュ方程式での微分演算子は,点変換の際に共変ベクトル成分として変換されることを確認した.
よってオイラーラグランジュ方程式は座標系によらない1形式として,以下のように幾何学的な意味を持っている.
$$ \mathcal{E}_i [L] dq^i = 0 $$
しかしオイラーラグランジュ方程式で求まるのは配位空間上の経路 $\dot{c}_L (t)$ であるから,以下のベクトル場
$$ \dot{c}_L (t) = \dot{q}^i \dfrac{\partial}{\partial q^i} $$
についての関係式として表せないだろうか.天下り的ではあるが,以下に続くように運動量の1形式の外微分と $\dot{c}_L (t)$ の内部積をとることでオイラーラグランジュ方程式を表現することができる.
ラグランジュ1形式
以前の記事 においては一般化運動量もまた共変的に変換されていたので,以下のような1形式
$$ \theta_L = p_i dq^i $$
も定義されている.その外微分
$$ d \theta_L = d\left( \dfrac{\partial L}{\partial \dot{q}^i} \right) \wedge dq^i $$
と$\dot{c}_L (t)$の内部積
$$\begin{align*} \left\langle d \theta_L | \dot{c}_L (t), \bullet \right\rangle &= \left\langle dp_i | \dot{c}_L (t) \right\rangle dq^i - \left\langle dq^i | \dot{c}_L (t) \right\rangle dp_i \\ &= \dot{p}_i dq^i - \dot{q}^i dp_i \end{align*}$$
を計算してみる.第2項は
$$ \dot{q}^i dp_i = d(\dot{q}^ip_i) - p_i d \dot{q}^i $$
と表すことができるがラグランジアンの全微分から
$$\begin{align*} dL(q, \dot{q}) &= \dfrac{\partial L}{\partial q^i} d q^i + \dfrac{\partial L}{\partial \dot{q}^i}d \dot{q} \\ &= \dfrac{\partial L}{\partial q}q^i + p_i d \dot{q}^i \\ p_i d \dot{q}^i &= dL(q, \dot{q}) - \dfrac{\partial L}{\partial q^i}dq^i \end{align*}$$
が得られるので,第2項はさらに
$$ \dot{q}^i dp_i = d(\dot{q}^ip_i) - dL + \dfrac{\partial L}{\partial q^i} d q^i = dH_L + \dfrac{\partial L}{\partial q^i} d q^i $$
と表される.ここで $H_L$ は引数が $q, \dot{q}$ であるハミルトニアンである(運動量の関数になっていないバージョンのハミルトニアン).
よって先ほどの内部積は
$$\begin{align*} \left\langle d \theta_L | \dot{c}_L (t), \bullet \right\rangle &= \left( \dot{p}_i - \dfrac{\partial L}{\partial q^i} \right)dq^i - dH_L \\ &= \mathcal{E}_i[L] dq^i - dH_L \end{align*}$$
となるから,オイラーラグランジュ方程式が成立する,すなわち $\mathcal{E}_i[L] dq^i = 0$ であるならば
$$ \left\langle d \theta_L | \dot{c}_L (t), \bullet \right\rangle = -dH_L $$
が成立する.これが微分形式で表された幾何学的な(座標系によらない)オイラーラグランジュ方程式である.