ネット上に落ちていたこのノート の第1章を読んで部分群,正規部分群,共役類,準同型写像などについて学んだ時のメモ.

群とは

群論を理解するには何かしらの具体例を用いるのが良いと思う.自分は対称群(置換群)が例としては良いと思う(非可換だから).群論において,一つ一つの要素は要素であり写像でもある.例えば対称群は $e$, $a_1= (1, 2, 3)$, $a_2 = (3, 2, 1)$, $a_3 = (1, 2)$, $a_4 = (2, 3)$, $a_5 = (3, 1)$ の6つの要素からなるが,写像として $a_2$ を用いると

$$ a_2 a_1 = (2, 3, 1) = e $$

となる.

部分群

先ほどの対称群において,その部分集合 $(e, a_2)$ は部分群をなしている.なぜならば $ea_2 = a_2 e = a_2$ , $a_2 a_2 = e$ より演算に関して閉じているためである.また $(e, a_1, a_2)$ も部分群になっている.

正規部分群その1

1つ目の難関.対称群がそうであるように基本的に群は非可換である.なので群論において掛ける順番は絶対に間違えることが許されないが,もし間違えて

$h_1$ の次に $g$ を使わないといけない,つまり $gh_1$ をある要素に作用させるために準備しないといけないのに

間違えて

先に $g$ を使ってしまった

としよう.しかしもしかすると順番間違いを補償してくれるような要素 $h_2$ が見つかって,無事 $gh_1 = h_2g$ とできるかもしれない.

$G$ の正規部分群とは,任意の要素 $g$ について,$gh_1 = h_2 g$ を満たすような $h_1, h_2, \cdots$ たちの集合 $H$ である.つまり,$H$の要素を使っている限り,もし順番を間違えてもそれを補償してくれる別の要素を代わりに提供してくれる,そんな集合がなす群のことである.

正規部分群その2

正規化群

上の例での正規部分群 $H$ は群 $G$ の全ての要素について順番間違い補償をしてくれる部分群であったが,流石に全ての要素についてそれを補償するのは厳しいのではないのだろうか.

ここで群 $G$ の全ての要素の代わりに,群 $G$ の部分集合 $S$ の要素について順番間違い補償をしてくれる要素の集合 $N_{G} (S)$ を $S$ の正規化群という.つまり任意の $S$ の要素 $s$ と $n_1 \in N_{G}(S)$ についてある $n_2 \in N_{G}(S)$ が存在して $n_1 s = s n_2$ のように順番間違い補償をしてくれるということである

なお,$S = G$ だったらこれは正規部分群となる.

中心化群

上の正規化群の例で,群 $G$ の部分集合 $S$ の任意の要素 $s$ と可換となる要素 $g$ の集合は群をなし,$S$ の中心化群といいます.

$$ C_{G}(S) = \langle g \in G | sg = gs \quad s.t \forall s \in S \rangle $$

部分群による分割

$G$ が部分群 $H$ を持つ時,任意の要素を掛けた $g_1 H, g_2 H$ は,完全に一致するかまたは完全に異なるのどちらかであるという性質.これは $g_1 H \subset g_2 H$ かつ $g_2 H \subset g_1 H$ を示せば証明することができる.

商群

少しややこしい.まずは以下のラグランジュの定理を事実として用いるのが分かりやすいと思われる.

ラグランジュの定理 有限群 $G$ の位数は,その任意の部分群 $H$ の位数で割り切ることができる,すなわち $|G|/|H|$ は割り切れる

この定理により,Gを $G = (H, g_1 H, g_2 H, ,,,)$ にように分割することができるのではないかと考えられる.例えば,対称群 $S_3$ において $H = (e, a_1, a_2)$ は正規部分群であり,

$$ a_3 H = (a_3, a_4, a_5) $$

となるので, $G = (H, a_3 H)$ のようにして2分割することができる.ここで, $H$, $a_3 H$ を1つの要素としてみなす.そしてその演算を

$$ (g_1 H)(g_2 H) = (g_1 g_2)H $$

と定義すると

$$\begin{align*} H \cdot H &= (e \cdot e)H = a_3 H \\ H \cdot (a_3 H) &= (e \cdot a_3)H = a_3 H \\ (a_3 H) \cdot (a_3 H) &= (a_3 \cdot a_3)H = H \end{align*}$$

となるので,確かに群となっている.一般的にもともとの群を

$$ G = (H, \gamma_1 H, \cdots, \gamma_n H) $$

と分けることができた時,

$$ (\gamma_i H)(\gamma_j H) = (\gamma_i \gamma_j)H == (\gamma_k)H $$

として集合同士の演算を定義する.これらが商群である.

準同型写像

ここの記事の具体例 が分かりやすい,2つの群が同型であるとは,2つの群の間で要素を対応付けると,群表の並び方が全く同じにあるということである.この対応付けのことを同型写像という.一般には単射でなかったり全射でなかったりするので,準同型写像という.

単準同型写像あるいは埋め込み

上のリンクでの例を少し変更して,$(0, 1, 2, 3)$ から $(0, 1, 2, 3)$ への写像の集合 $(f_1, f_2, f_3, f_4)$ が図のように群をなしているとする.よく見てみると,

単射

$f_1$ <==> $0^{\circ}$
$f_3$ <==> $120^{\circ}$
$f_4$ <==> $240^{\circ}$

という準同型写像 $\phi$ があり,この写像は $\phi$ は全射ではなく単射となっている.この状況は,$(0, 120, 240)^{\circ}$ の関係が $(f_1, f_3, f_4)$ の中に埋め込まれていると表現することがある.

自己同型

自分自身に同型な写像.これは自分自身を並べ替える作用を持つ.

正則表現(群の表現論)

集合 $(e, a, b)$ が $ab = ba = e$, $aa = b$, $bb = a$ によって群をなすとする.すると

$$\begin{align*} (ee, ea, eb) &= (e, a, b) \\ (ae, aa, ab) &= (a, b, e) \\ (be, ba, bb) &= (b, e, a) \end{align*}$$

という関係が得られるので,これを行列っぽく

$$\begin{align*} e \longleftrightarrow |e\rangle = (1, 0, 0)^{\text{T}} \\ a \longleftrightarrow |a\rangle = (0, 1, 0)^{\text{T}} \\ b \longleftrightarrow |b\rangle = (0, 0, 1)^{\text{T}} \end{align*}$$

と表現する.そして作用としてxを左からかけることを行列で $D(x)$ と表現すると,先ほどの3つの式は

$$\begin{align*} D(e) (|e\rangle |a\rangle |b\rangle) = (|e\rangle |a\rangle |b\rangle) \\ D(a) (|e\rangle |a\rangle |b\rangle) = (|a\rangle |b\rangle |e\rangle) \\ D(b) (|e\rangle |a\rangle |b\rangle) = (|b\rangle |e\rangle |a\rangle) \end{align*}$$

と表される.よって作用としては各要素は

$$ D(e) = \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix} \\ $$

$$ D(a) = \begin{pmatrix} 0 & 0 & 1 \\ 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \end{pmatrix} \\ $$

$$ D(b) = \begin{pmatrix} 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \\ 1 & 0 & 0 \end{pmatrix} \\ $$

と表現される.つまり $D(g_i)|g_j \rangle = |g_i g_j \rangle$ である.要素が写像(行列)でもあり要素(ベクトル)でもある群論らしい表現.

既約表現

不変部分空間 についてはこちらの記事に書いたが,もし各表現 $D_i$ が不変部分空間を持つ場合可約であるという.可約な表現空間は不変部分空間の和に分解することができる.可約である場合,適当な相似変換により

$$ \begin{pmatrix} D_1(g) & X(g) \\ O & D_2(g) \end{pmatrix} $$

とできて,完全可約である場合さらに $X = O$ となって

$$ \begin{pmatrix} D_1(g) & O & \cdots \\ O & D_2(g) & \cdots \\ \vdots & \vdots & \ddots \end{pmatrix} $$

とブロック対角化できる.