確率になぜ測度論が必要なのか

0.1 "Pillow Problems"より

ルイス・キャロルが考えた数学の問題には確率に関するものも含まれており,以下の問題には奇妙な解答が示されている.

問題0.1
無限個の棒を折ったときに少なくとも1本が真ん中で折れている確率は?

この問題に対するキャロルの答えは \(1 - 1/e\) であり,以下のように求めている.

棒それぞれはそのn分点のみで折れて(nは奇数)折れやすさはどこでも等しいとする.ある棒が真ん中以外で折れる確率は(1-1/n)だから,n本の棒全てが真ん中以外で折れる確率は(1-1/n)^nである.よってnの極限をとると,少なくとも1本が真ん中で折れている確率は1-1/eとなる.

この論法の問題は,棒の本数を \(kn\) 本として極限をとりkを調節することで収束値を任意に決められてしまうことにある.有限の世界での確率を無限に持っていく時に,それが極限の世界で正しい意味を持つのかは自明ではない.