第7章 ハミルトニアン

7.4 ポアソン括弧

ポアソン括弧を使うと,正準座標(正準座標もいろいろあるけど)を使ってポアソン括弧を計算する限り,任意の物理量fの時間変化は

\begin{align*} \dot{f} = \{f, H\} \end{align*}

と与えられるのだけど,「(q, p)を使ってポアソン括弧を計算した結果と(Q, P)を使って計算した結果って本当に一緒になるっけ?」とたまに混乱することがある.物理量fは(q, p)で表せば \(f(q, p)\) ,(Q, P)=(Q(q, p), P(q, p))で表せば \(f(q, p) = \bar{f}(Q, P)\) となる.他の正準座標(Q, P)で表すと引き戻しにより(q, p)による代数的な表現から変化することに注意.

よって(q, p)によるポアソン括弧

\begin{align*} \{f, H\} = \sum_{i=1}^{n} \dfrac{\partial f}{\partial q_i}\dfrac{\partial H}{\partial p^i} - \dfrac{\partial f}{\partial p^i}\dfrac{\partial H}{\partial q_i} \end{align*}

は(Q, P)によるポアソン括弧

\begin{align*} \{f, H\} = \sum_{i=1}^{n} \dfrac{\partial \bar{f}}{\partial Q_i}\dfrac{\partial H}{\partial P^i} - \dfrac{\partial \bar{f}}{\partial P^i}\dfrac{\partial H}{\partial Q_i} \end{align*}

と一致する.スカラーであるとはこのように,特定の座標系によらない値であるということである.それは物理量たる資格がある.

7.5 リューヴィルの定理

相空間上での物理量 \(f(\{q\}, \{p\})\) に対して

\begin{align*} \boldsymbol{X}_f = \left( \dfrac{\partial f}{\partial p_1}, \cdots , \dfrac{\partial f}{\partial p_n}, -\dfrac{\partial f}{\partial q^1}, \cdots , -\dfrac{\partial f}{\partial q^n}\right) \end{align*}

をfに対するハミルトンベクトル場という.相空間において閉領域 \(D_0\) をとると,この領域がハミルトンベクトル場

\begin{align*} \boldsymbol{X}_H = \left( \dfrac{\partial H}{\partial p_1}, \cdots , \dfrac{\partial H}{\partial p_n}, -\dfrac{\partial H}{\partial q^1}, \cdots , -\dfrac{\partial H}{\partial q^n}\right) \end{align*}

に沿って時刻t後に \(D_t\) まで移動したとする.このとき,体積は保存して \(\mathrm{vol}(D_0) = \mathrm{vol}(D_t)\) となっている.

7.6 ポアンカレ・カルタンの不変量

今度は相空間内での閉曲線 \(\gamma_0\) を考える.これに沿った線積分

\begin{align*} I[\gamma_0] &= \oint_{\gamma 0} (p_1 dq^1 + p_2 dq^2 + \cdots + p_n dq^n) \\ &= \sum_{i=1}^{n} \int_{0}^{1} p_i(\sigma) \dfrac{d q^i(\sigma)}{d \sigma} d \sigma \end{align*}

は,閉曲線 \(\gamma_0\) がハミルトンベクトルに沿って \(\gamma_t\) に移動しても保存する.

\begin{align*} I[\gamma_0] = I[\gamma_t] \end{align*}

これをポアンカレ・カルタンの積分の不変性という.