ラグランジュ形式の解析力学(導入編)

作用反作用の作用と,最小作用の作用は異なる.

4.1 作用とは何か

まず初めに理解しなければならないのは,解析力学における「作用」はニュートン力学における「作用反作用の法則」の「作用」とはなんの関係もない. ここでいう作用とは「動力学に対するポテンシャル」,つまり軌道の汎関数である.それと同様に作用とは

経路 \(x(t)\) を定めると作用 \(S[x(t)]\) が決まる.作用の変分が0になる経路が,実現される経路である.

具体的にはラグランジアンを積分したものが作用と呼ばれるべき汎関数である.

で,結局作用って何ですか?

作用とは「その量を変分して0という条件を求めたら運動方程式が出てくるもの」を探して見つかったもの.

「変分が0と要求すると運動方程式になる」のが作用の定義なら,作用をわざわざ作る意味は何ですか?

運動方程式が導出されるように作用を定義してきた.しかし「それならば初めから運動方程式を使えばいいじゃないか.わざわざ作用を経由するなんてめんどうではないか」と思う人がいるかもしれない.主な理由としては

  • 座標変換に強いこと
  • 複合系の式を拘束力を無視して立てることができる
  • 系の不変性や保存量などの情報を取り出しやすい

運動方程式としてのオイラーラグランジュ方程式

ラグランジアンの不定性についてここでは説明されている.たまに気になるのだが,ラグランジアンの不定性はゲージ変換と関係はあるのだろうか?

実はラグランジアンに \(dG(x, t) / dt\) なる関数を付け加えてもオイラーラグランジュ方程式の形は変わらない.なぜならば,この項は時間積分しても定数になるからである.

\begin{align*} \int_{t_0}^{t_1} \dfrac{dG}{dt} = G(t_1) - G(t_0) \end{align*}

あるいは以下のようにも計算できる.

\begin{align*} \dfrac{dG}{dt} = \sum_{i}\dfrac{\partial G}{\partial x_i}\dot{x_i} + \dfrac{\partial G}{\partial t} \end{align*}

より

\begin{align*} \dfrac{\partial}{\partial \dot{x_j}}\dfrac{dG}{dt} = \dfrac{\partial G}{\partial x_j} \end{align*}